Loading

BLOG

実店舗のお洋服のドラマ ~運命のスーツ~

今日は実店舗で販売しているお洋服についてのお話をしたいと思います。

Dramasにあるお洋服や骨董品は基本的に寄付していただいた物や仕入れた物、私が個人的に集めていたコレクションなどです。

私がアクセサリーの他に古着や骨董品などを扱うキッカケを知りお洋服などの協力をしてくれた方がいます。

その方達からお洋服をいただく中で、そのお洋服にある想い出やその方の気持ちなどをお話してもらう事があります。

そういった物語を聞く事で、私はより一層、物を大切にできる気がします。

今日はある主婦の方から頂いたスーツのお話です。

お手紙をいただいたので、原文をそのまま載せようと思います。

***

『もう40年近く前の話です。

いつの間にこんなに時間が経ってしまったのか自分でもびっくりしています。

初めて働いた年の事、一か月のお給料が10万円ほどでした。それと年に2回(3回だったかも?)、3,000円分の商品券をいただけました。

とても嬉しかった。でも田舎者の私にはどこでどう使って良いかも良く分からず、職場の仲間に一緒にデパートに連れて行ってもらいました。

キラキラした店内をエレベーターに乗っていくときの緊張感とワクワクドキドキは今でもよく覚えています。

けれどいつも自分の身に付けている物とは一桁違う商品ばかり。

諦めかけたその時、処分品コーナーの所が目に留まりました。

そうは言ってもみな普段は手の届かない高級品ばかり。

その中に上下でサイズの違うスーツを見つけました。

上が11号で下が9号。なんていう事でしょう!!私の体形はヘンテコで、肩幅が広く手が長い。

でもやせっぽちでウエストは細い。だから上下9号では袖がつんつるてんで上下11号ではスカートがくるくる回ってズレ落ちる。

だから上下でサイズの違うこのスーツはきっと私を待ってくれていたんだと思ってしまいました(笑)

試着してみるとピッタリ。アイボリーで少し麻の混じったようなナチュラルな生地にハイカラーのデザイン。好きでした。

握りしめた商品券でも買える!本当に嬉しかった。

いつも何を着てみても似合わず、安くても買わずに諦めていた私が、こんな素敵な服、しかもサイズもピッタリだなんて。

あー頑張って良かった!失敗ばっかりで自信なくて迷惑ばかりかけている私だけれど神様が頑張れって言ってくれている気がした。

(大袈裟ですネ。笑)

それからいつの間にか何十年もたって主婦になり生活に追われおしゃれする事も忘れてしまって…

この服を着ていくこともなくなった。

でも時々、箪笥の中のこの服を見るとあの頃の事がさっと頭に蘇って。

処分しようと何度も箪笥から出しては見たもののどうしても捨てられませんでした。

沢山着たわけでもないので傷んでもいない。捨てるのは私には難しくて、

でも今こんな古い物を着る人なんていないでしょ?

けれど自分でゴミ袋にはどうしても入れられなかった。

だから誰かの所でまたオシャレに着てもらっているのかなぁと思えるだけで心が軽くなりました。』

***

この方は、お花が好きで、しかもお花屋さんで元気いっぱいこれから綺麗に咲きそう!というお花ではなく

処分品のもう枯れそうで一年草なのでもう来年は咲きません。みたいなお花をあえて買ってくる方です。

『なぜなのかしらね。なんだかこの隅っこに追いやられている方の苗の方がどうしても連れて帰ってあげたくなるの。』

そんな風に言って60円やそこらで買った一年草の花は、何故か彼女の庭では翌年も芽が出て花が咲き続けたりします。

なんならいつの間にか株が大きくなり花が増えています。(もともとは多年草で日本では気候の関係上一年草扱いのものなのかもしれませんが)

失礼ながら、これもうさすがに枯れてません!?(笑)という鉢植えを嬉しそうに抱えた彼女を見て、私は思わず笑ってしまいました。

大笑いする私に『えへへ』と照れたように笑う60歳近い彼女を見て。

私は心がとても温かくなっていくのを感じました。

最近はヘアドネーションをするために数年間伸ばしていた髪を切ったそう。

良く優しすぎる人を見ると、心の歪んだ私は『偽善だ!』と言ってしまったりするのですが(笑)

そういった、自分を他人に良く見せたいから偽っているのではなくて、

きっとこういう方は、誰かのためになる事で自分自身も同じように心が救われているのだろうなと思います。

優しい気持ちって、いいな。

私は同じようになれる事はないと思うけれど、少しは優しい心を持った人間になれたら良いなと思います。

私は穏やかさとは程遠い感情の起伏が激しい人間なのでなかなか難しいのですが…(^_^;)

仕事となるとどうしても『経営』という事を切り離して考えることが出来ないので利益の事、テナント家賃の事、生活の事などに目を向けがちな最近です。

特にコロナの事もあり不安な日々も続いています。

でも、初心を忘れないようにこうしていただいたお手紙を時間のある時に読み返したりしたいなと思いました。

お手紙にあった、『握りしめた商品券でも買える!』という一文を見た時、

私が18歳で初めて東京に来た時の事を色々と思い出し、胸がギュッとなりました。

初めて行った109や伊勢丹、東武、西武、高島屋の怖かった事といったら!!!(まぁ今でも結構怖い。笑)

思う事が沢山あり過ぎて、何だか涙が出そうでした。

あれから14年、私も随分歳をとったものです。

あるおばあ様とお嫁さんのカーディガンのお話もとても素敵だったのでまた今度、写真付きでブログに書けたら良いなと思います。

大切にされてきたものが、大切にしてくれる人の元でまた新しいドラマを刻み、寿命が来るその日まで輝けますように。

Dramas.

昭和レトロなイヤリングたち。

アウトソーシング。

関連記事

  1. 2019年を振り返って。

    2019.12.29
  2. 真っ黒な手!!

    2016.03.14
  3. 3月26日~30日までの急ぎの注文に関して

    2016.03.26
  4. お店の事、コロナの事、接客の事。

    2020.12.20
  5. アウトソーシング。

    2020.08.02
  6. 4月の雪。

    2019.04.18

Facebook

PAGE TOP