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ドルガバの香水女。

※このお話はフィクションです。最近流行の歌を聞いた私の妄想劇。

夜中にいきなり電話されちゃうマー君と名前も知らない元カノとチサトちゃんのお話。

***

『夜中にいきなりさ、いつ空いてるのってLINE。君とはもう3年位会ってないのにどうしたの。』

なんておぞましい歌詞の歌が流行っている。

その女はどうやらドルガバの香水をつけているらしい。

そして巻き起こる全ての事は、どうやらそのドーールチェアーーンドガッバーーーナァーーの香水のせいらしい。

そんな曲を私は、LINEをした方でもされた方でもない“LINEを送った男の今現在一緒にいる女”の立場から解説しよう。

それでは聴いてください。2020年新曲、当事者以外の横にいる“今の女”からのアンサーソング。

『ドルガバの香水女シネ。』

***

土曜日の夜、二人で楽しく飲んで歌って、心地よい夜風にふかれながら少しお散歩して帰ろうか、なんて爽やかなデートの帰り道。

爽やかであったものの、私達はもう26歳できちんと大人だった。

時間は夜中の2時40分。

9月半ばのこの時間、風は気持ちよく丁度いい温度で歩く事もとても楽しかった。

私達は相思相愛で、会話は楽しく価値観も近くお互いの容姿にも大変満足していた。

こんなに幸せな事ってあるんだなぁと、手をつなぎながら他愛のない会話をしながらのお散歩。

平和で、心穏やかな時間だった。

そんな時、いきなり電話が鳴った。

テケトンテントンテントン♪トントントンテケトンテントンテントン♪

あの奇妙なiPhoneの着信音は、妙にビクついてしまう。

彼はディスプレイを見て静かに凍り付いていた。

「誰?」と聞くと少し間をおいて「元カノ」と言った。

はぁ?何で元カノとまだ連絡とってんだよつうか別れたなら連絡先消せやバカ。

という心の声を押し殺して「なんで?」と殺意を漂わせながら言った。

「ちょっと、、わかんない。」そう言って彼は電話に出た。

は???

何で出たのコイツ。

さっきまでの楽しい爽やかな雰囲気が幻だったかのように今の私は殺意に満ち溢れている。

こんな時間に電話してくる女にも、出ちゃう目の前の彼にも。

呆気に取られて何も言えずにただ電話する彼を口を半開きにしながら見ていた。

深夜で辺りがビックリするくらい静かだったせいで、もしもし?マー君??と言う甘ったるい女の声がはっきり聞こえた。

私の低く落ち着いた声とは違う、アニメ声優のような鼻にかかった高い声。

「…うん、うん、…俺さ、今彼女と一緒で…ごめん、もう電話とかちょっと…ごめん。」

ナニアヤマッテンノコイツ??

謝るのはそいつにじゃなくて私にだろうがボケ。

彼は申し訳なさそうにしどろもどろに説明を始めた。

「なんかあったみたいで…もともと病んでる子だったんだよね、この子。俺しか頼れる人いないみたいで…」

そんなわけねぇだろ。どんだけ友達いない女なんだよ。頼れるのが元カレしかいない女ってどうゆう奴よ?

私は何も言わず黙っていた。

「でももう電話とか無理って言ったから。悪い子ではないんだよ。ただちょっとメンタル弱い子で…」

私は我慢できずにものすごい勢いでまくしたてた。

「メンタル弱かったら元カレにこんな時間に電話しても良いんだ?てかもう彼女出来たかもとか思わないんだね。凄い自信だね。

てかさ、新しい彼女出来たならもうその子のLINEはブロックして欲しいし電話も着拒して欲しいんだけど。

てかこんなこと言わないと出来ない人だとは思ってなかったよ。別れてもちょこちょこ連絡とりあうとかどうゆう神経してるの?うざ。きも。」

息継ぎすらせずに一気にこんな長いセリフを、噛まずに言えた自分に驚きだ。

彼は目を見開いて黙っていた。

「…なんで元カノと連絡とってるだけでそこまで否定されなきゃいけないの?てか別れた後も友達でいる人だっているじゃん。」

友達、というワードを聞いて私は胸のあたりがぐわぁぁぁああと熱くなり息が出来なくなった。

胸を象に踏みつぶされているかのような圧迫感と熱が、上半身にじゅわっと広がった。

「友達!?!?!?!?!ふざけんな!!今すぐ目の前でLINEブロックして消してよ!!!」

彼はうんざりしながら「ちょっと、落ち着いてよ。冷静になってよ。怒り過ぎ。」

この文章、単語、言い方、全てが私の地雷を踏んだ。

まるで私がヒステリックになるのが非常識かのようなこの振る舞い。

普通、これくらい怒っても無理はないシチュエーションでは?

というか、お前の行動と言葉のせいでここまでキレているんだが??

「いいから今すぐLINEブロックして削除して!!!」

そう声を張り上げる私に彼は冷めた様子で面倒くさそうに「後でやっとく。」と言った。

次の瞬間、私は彼のスマホをひったくっていた。

池袋からお散歩をして15分、JR大塚駅のうつせみ橋の上。橋の上からは紫色に光るスカイツリーが綺麗に見えている。

奪ったスマホを、そのスカイツリーめがけて私は力いっぱい投げた。

無音のまま宙を舞ったスマホは、大して遠くまで行かずにゆっくりと線路に向かって落ちていった。

「おい!!!!!」

彼の大声を背中で聞きながら私はもう走り出していた。

今日はスニーカーを履いていて良かった。

身長168㎝。歩幅は大きい。

私の全力疾走に普通の人は追い付けない。高校では陸上部で短距離走は関東大会に出場していた。

背中から、チサトーー!!と叫ぶ声が小さく聞こえた。

ふざけんなバカ野郎。あんなアホな男だとは思わなかった。

もう二度と会う事はないでしょう。さよならイケメンぽんこつヒモ野郎。

あたりは静かな住宅街。涼しい9月、夜中の3時過ぎ。

一人ぼっちは寂しすぎる。

でも土曜のこんな時間に友達に電話するなんて迷惑な事できない。

大体、土曜の深夜なんてみんな楽しい事してる時間に決まってる。

そんな時にめそめそこんな愚痴なんて言えない。

でも誰かと話したい。ムカつきすぎてプライドもズタボロで頭がおかしくなりそう。

こんな時に私の事を都合よく甘い言葉で慰めてプライドを保たせてくれるのは…

「…もしもし??」

気付くと私は“元カレ”に電話をかけていた。

***

おしまい。

***

はい、まるでホラー映画のような連鎖の『夜中に元カレに連絡する女たち』のお話でした。

私の持論ですが、元カレに電話する女はもれなく現状不幸か満たされない気持ちでいる人です。←偏見

病んでるふりするかまってちゃんは20代も半ばを過ぎたら痛い女になりますのでご注意を。

お話に出てきたうつせみ橋は実際に東京のJR大塚駅にあり、そこからはとても綺麗にスカイツリーが見えます。

ここに見えるようにわざわざ空間を開けていたのかと思うくらい、すっぽりと納まるように見えるスカイツリー。

静かな深夜に1人でここからスカイツリーを眺めるのが、私は大好きです。

私は香水の歌を聞いた時にまるで見た事があるドラマの様に頭の中にこのお話が舞い降りてきました。

と言うのも、コンビニにアイスを買いに行った深夜、うつせみ橋でスマホを奪い取り叫びながら投げつけている中国人らしき女性とうろたえている男性を見た事があったから。

中国語なので何を言っているのかは分からなかったけれど、面白そうだったのでしばらくアイスを食べながら鑑賞して帰った26歳頃の秋。笑

もし私があそこまで怒るとしたら、単純な浮気などではなくもっと闇深い「昔の彼女が~」みたいな事かなと思いました。

そしてもし私だったらスマホを道路に叩きつけるなんて生ぬるい事は出来ないな、きっとここからスカイツリーめがけて平成の怪物松坂大輔のごとく剛速球を投げるな。

なんて思いながら。

でもきっと、その女性が男性のスマホをひったくって道路に投げつけていたのも、

全ては、

ドーーールチェアーーーンドガッバーーーナァーーの香水のせいなのでしょう。

チャンチャン。

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