※このお話はフィクションです。
連載なので1話目を読んでいない方はこちら→【#1 鬱病のみずきちゃんは今日も(まだ)死んでない。】
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…なんだこの遺書じみているブログは。
僕は何だかヤバい物をヤバい時に見てしまった気がした。
みずきちゃんのTwitterの更新が途絶えてから3週間と4日。
え、ちょっと待って。死んでないよね?笑
元々こういうノンフィクションチックな、でも絶対フィクションの暗い文章を書く人だったし。
そうは思いながらも何故かドキドキが止まらない僕は、急いで2話目のブログを開いた。
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3月3日。曇り。
ダラダラとテレビを見る毎日。今日はコールドケースというドラマを見てほんの数時間『死んでないだけの状態』から生き返った。
元々は海外ドラマで、私はそれを20歳の頃渋谷の割と良いマンションでバイト終わりによくWowowで見ていた想い出がある。
マジで家賃高かったな、あそこ…
リリーという女刑事がとてつもなく美しいのと、オープニングで毎回同じ曲、あぁ~♪という女性の悲しく叫ぶような声から入るのがとても印象的だった。
そのドラマを日本版にリメイクした物がまたWowowで放送されていた。
何となく見ているうちに、私はいつものぼんやりとした世界からほんの少し意識が回復したように思えた。
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そのドラマの内容はこうだ。
サイコパスに囚われた女性たち。ハツラツとして充実した毎日を送っていた彼女たちが希望や生きがいを失くす瞬間を見るために男は女性を拉致監禁していた。
子供が生まれたばかりの幸せな女性や神を深く信じる教会のシスター、婚約したばかりの正義に燃える弁護士。
彼女達を数年にわたって監禁し、『もう二度と愛する者には会えない』と洗脳する犯人。
そして段々と瞳の中の光は消え、希望や生きる力を失う。
そうした女性たちを見てサイコパスは満足そうに微笑む。
そもそもこの男がこうなった経緯はこうだ。
幼少期にたまたま古井戸のそばを通りかかり、一人の女の子がそこに落ちてはまっていたのを見つけた。
かなり長い間水につかっていたのだろうか、声も出せずにぐったりと助けを乞うようにこちらを見つめた少女に、男は唾を吐きかけた。(え、やば)
すると少女は絶望し、力尽きて水の中に沈んでいった。
捕まった時、刑事にそのサイコパスは言う。
『その時、なんて綺麗なんだろうと思った。』
『死ぬ瞬間が?』と問う刑事にサイコパスは『諦めた瞬間だよ、生きる事を。』と言った。
それ以来この男は生き甲斐を持つ女性からそれを奪う事によって、絶望し諦める瞬間を見るために犯行に及んでいた。
この会話を聞いていた私は思わずテレビに向かって叫んだ。
『は?お前に拉致監禁された今この瞬間から、私の生き甲斐は絶対にお前をぶっ殺すという事になるが???』
ドラマの中の話だし、実際本当にそんな場面になったらどうかは分からない。
でも私は、誰かに酷い事をされて黙って下唇を噛むような女じゃない。泣き叫ぶだけの女じゃない。
私をこんな気持ちにしたやつを、私は絶対に許したりなんかしない。
たとえこの命が消える危険が伴うとしても、お前に瀕死の一撃を食らわせてから死ぬ。
お前を無傷ではかえさない。
いや、むしろ、私は絶対に死なないとさえ思う。
お前が男で私より力があっても(犯人役の人は背が低いしヒョロイからなんか私でも頑張ればやれそうでしたけども)、武器を持っていたとしても、アドレナリン全開の私はたとえ腕をもがれようと腹を刺されようと立ち向かい、その首に噛みついて肉を引きちぎってから絶命するだろう。
刺されたらどうせ助からない。それならばこの腹に刺さったナイフを引き抜き必ず貴様にも突き刺してやる。
どうせ死ぬのなら、絶対にただでは死なない。
私は、そういう女なのだ。
そう思ったら、私は急に力が湧いてきた。
そうだ、私はやられてめそめそ泣いたり『自分が悪いんだ』なんて言うタイプの女じゃない。
私は、恐怖も怒りも憎しみもパワーに変える女だ。
今までもずっとそうだった。
『死ね』といわれたら相手の目を見て『は?お前が死ね』と言う女。
子供の頃からどんなに集団でいじめられても、決してめそめそ泣いたりしなかったので被害者にすら見られなかった女。
そう、私は強いのだ。
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そのドラマを見て小一時間そんな事を熱を持って考えた後、私はまたいつものように薄いレースのカーテンがかかったような、ぼんやりとした『すべてがどうでも良い世界』に戻っていった。
あぁ、どこかの殺人鬼が私の事を殺しに来てくれないかな。
そうすれば私は、また強い意思で『生きよう』と思えるかもしれないのに。
***
おしまい。
#鬱病のみずきちゃんは今日も(まだ)死んでない。
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