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アプリの恋・ミサちゃん

※このお話はフィクションです。マッチングアプリで恋人を探すミサちゃんのお話。

色の付いた文字はタップすると関連するお話に飛べます。

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いつも違う高級ブランドの腕時計をしていたのですっかり信用した。

彼のインスタには趣味の時計や車の写真がセンス良く並べられていて、清潔感と高級感で溢れていた。

25万のHamilton、50万越えのZENITH、100万はいってるRolex。

あぁ、私はなんてバカなんだ。

ブランドの腕時計や靴、バックの真偽をいくら見分けられたところで、それは全く意味を持たなかった。

ロレックスのサブスクは月額たったの17,800円。

インスタに並ぶオシャレな別荘やタワマンからの風景、高級な寿司やステーキの写真は拾い画。

あぁ、あんなに気を付けていたというのに…

***

キッカケは4時間前にさかのぼる。

たまたまフォローしていたキャバ嬢のインスタにコメントしていた謎の若社長のアイコンをタップしたから。

拾い画するならもう少し有名じゃない人を狙いなさいよね。

なんの会社を経営しているのか良く分からない謎のコンサル若社長のインスタにはユウ君のインスタに乗っていたのと同じ写真がいくつかあった。

私、画像の記憶力だけは物凄く良いんだよね。

ふっざけんなクソが!!!

LINEだったら、この言葉の後に絶対天使の絵文字を入れるだろうな。分かる人はきっと同世代(*´▽`*)/

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さて、そんな拾い画にサブスク疑惑のユウ君とマッチングアプリで出会って何度か目のデート。

期待値が高いハイスペックな彼とのデートに浮足立ってしまい、待ち合わせの時間より30分も早く着てしまったのが悪かった。

その30分でインスタの事実を知ってしまうなんて、最悪のタイミングだ。

麻布で素敵なレストランディナー。

ただの平日にまるで記念日みたいなお店を予約してくれた彼が、本当は拾い画で自分を煌びやかに見せているだけのしょぼい男だと思うとめちゃくちゃ萎えた。

アプリでは端正な顔立ちだと思っていたのに、実際に会うと鼻は大きいし人中長すぎ、30歳だというのにベタベタに付けた整髪料とツーブロックのイキリ感のあるヘアスタイルがとてもダサく見えた。

でも、この年収でそこそこ女慣れして会話がまぁまぁできる人間はマッチングアプリではキープ要因だ。

リアルに年収が上がれば上がるほど、会話が成立しないようなタイプか結婚する気などない遊び人になる。

『俺、何故かギャルっぽいお金目当ての女の子にばっかり好かれるんだよね。だからミサちゃんみたいに家庭的で穏やかな子って良いなぁって思って。』

そうはにかんで言う彼のしたたかさに吐き気がした。

『私はユウ君のステータスが好きで会いたいと思ったわけじゃないから。』とぎこちなく微笑み、美味しいかも分からないワインを飲んだ。

あんなに素敵なところで食事をしたのに、帰りは電車という詰めの甘さにも私は若干イラついていた。

タクシーで帰せや。

あ、でもこれギャラ飲みやパパ活じゃないからタクシー代なんてもらえないんだった。

あーぁ、こんな事なら今日はパパ活を優先すれば良かった。

 

池袋で降りるんで、と言った彼はもうイキった埼玉県人にしか見えなかった。(善良な埼玉県人よ、ごめん。)

お前ブクロに住んでるって言ってたけど絶対埼玉だろ。と思ってしまうのはきっと全部映画【飛んで埼玉】のせい。

降りる直前に、彼は上品にこう言った。

『あの、またお誘いしても良いですか?』

『はい、勿論です。』

そう言って私達はお互い爽やかな笑顔で別れを告げ…

そして私は秒速でスマホを取り出しユウ君をブロックしマッチングアプリを開いた。

隣に座っている質素な女の子が私の様子を横目で凝視している。

マジか、と言いたげなその視線に気づかない振りをして私はマッチングアプリのいいねの数を即座に把握し彼らのプロフィールをチェックした。

私には、時間がないんだ。

綺麗に塗られた桜色のネイルには派手になり過ぎないように、でも丁度いい塩梅でうっすらとラメが散りばめられている。

2週間に1回はネイルサロンに行かないといけないジェルネイル。

この綺麗なネイルを、一生させてくれるような人と付き合いたいンだ。

別に、パパ活で生活しているリンちゃんの様に夜の六本木の女のようなきらびやかな生活をしたいわけじゃない。

でもこのナチュラルで長いまつエクや、綺麗にトリートメントされたツヤツヤな髪やベースメイクだけで十分なレーザー治療による美肌、流行のファッションを常に維持させてくれるような人といたい。

サブスクの腕時計でドヤッているような奴じゃ、こんなの維持なんてできない。

メルカリで値引き交渉された、新品箱付きです!みたいなルイヴィトンをプレゼントされるのが関の山だ。

人の事を棚に上げて、私の持っているCELINEの最新バックは勿論サブスク。

自分じゃ手に入らない物は全部誰かからその時だけ借りればいい。

後でちゃんと返すよ。どうせすぐに飽きちゃうし、インスタで自慢したいだけだから。

最新のキラキラしたブランド品をインスタにアップするたびに、それがまるで一生自分の物になったかのような気がする。

ほんの少し貸してもらっているだけのそれが、正方形の写真の中にキラキラのエフェクトと一緒に閉じ込められる。

その瞬間にそれはサブスクなんかじゃなくて“私の物”になる。

とってもお得で便利な世の中だなぁって思う。

でも将来は、サブスクなんかじゃなくてちゃんと買ってくれる人と結婚するンだ。

24歳。賞味期限と呼ばれるまでにはあと2~3年しかない。

今どき30歳過ぎてから結婚なんて普通よとキョウコさんは言うけれど。

ビアンカの女・キョウコ

私、そんなに働きたくないし、30歳を過ぎてから良い物件が見つかる確率なんてどんどん下がっていく。

20代後半で30歳前半の将来有望なイケメンとイイ感じでそつなくゴールインしたいんです、私。

別に私の事を心から愛してくれてなくても良いの。

豊かな生活と平穏な日常を与えてくれるだけでいい。

広い新築の、お風呂が綺麗で白い大理石の床に天井の高いエントランス、管理人さんがホテルマンみたいなオートロックマンション。

テラスから見える夕日にうっとりしながらのんびり紅茶とか飲んで過ごしたい。

子供は要らないからチワワとか飼いたいな。それかトイプー。

ドラマチックで素敵な恋愛なんて望んでないんです。

優雅で映える環境を整えてくれるような人であれば、そもそも好きになれそうです。

自信過剰かもしれないけれど、私なら何とか良い所まで行けると思うんだ。

就職難だと言われた世代で一発で第一志望の会社に受かった私だもん、この婚活だって、きっと上手くいく。

婚活も就活も私には同じことのように思えた。

はぁ~あ。

今度はサブスクも念頭に置きながら吟味しないとダメだな、なんて学習して少しレベルアップした自分を誇らしく思いながら私はマッチングアプリのプロフィールを素早くスワイプしていた。

***

おしまい

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30歳を過ぎても結婚できると言ったキョウコさんのお話はこちら→【ルビーの女・キョウコ】

ビアンカの女・キョウコ

パパ活の六本木女、リンちゃんのお話はこちら→【シトリンの女・リン】

六本木で働く整形美女のマリンちゃんのお話はこちら→【トリプレットオパールの女・マリン】

隣でミサちゃんをガン見していた質素な女のお話はこちら→【私は海の見える一軒家を3,000万円以内で】

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